競業避止義務

競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)とは、

退職後、期間や職種を限定しながらも、転職に制限を掛けることです。

秘密情報を不正競争防止法の「営業秘密」として管理する場合、難点があります。

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1 「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の3条件を満たす必要がありますが、コストや手間暇がかかります。
2 信用回復、使用差し止め、損害賠償請求をする場合、秘密情報の取得、使用、開示されたことを、こちらから立証する必要がありますが、結構たいへんなことです。
3 ライバル企業に転職された場合、転職後は密室になるため、ライバルに秘密情報を取得されたかどうか知る術がありません。

そこで、ライバル企業への転職自体を制限するのが競業避止義務です。
「営業秘密」の秘密保持義務よりも、違反(転職)をキャッチすることが容易になります。
転職による秘密情報漏えい・技術流出については、競業避止義務と「営業秘密」の秘密保持と平行して使うことで、より確実に秘密情報を守ることができます。

競業避止義務が認められるためにも詳細な条件があります。

役員や社員が退職するときに、次のような誓約書を取りつけた場合はどうでしょうか?

「当社を退職後、全国の当社と同業種への転職は終身禁ずる。」

このような誓約書は職業選択の自由の原則から無効です。
職業選択の自由とは、憲法第22条第1項で定められている経済的自由権のひとつです。
競業避止義務契約は基本的人権を制限するわけですから、必要最小限なものでなければなりません。
過剰な制限は無効となってしまいます。

つまり、スレスレのラインで交わす必要があるのです。

守るべき企業の利益があるか?

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守るべき企業の利益があることは当然のことです。
これがないのに、感情的理由から競業避止義務を課すわけにはいきません。
不正競争の「営業秘密」に限定されず、営業秘密として管理することが難しいものでも良しとされます。

在職中の役員・社員の地位については、秘密情報に関与していたかどうかの問題になります。
肩書によるものではなく、具体的な仕事の内容によって判断されます。

地域の限定がない場合(全国どこにおいても禁止)にしない限り、地域の限定があれば(○○県内は禁止、本社及び○○営業所隣接の地域は禁止、等)他の制限に比べて緩く解されているようです。

期間は最近の傾向として、1年以内なら認められやすいものの、2年の競業避止義務は認められない傾向があります。
もう少し長期にしてもらいたいところですが、1年~2年の間に設定しないと競業避止義務全体が無効になってしまいます。

範囲とは、在職中の役員・従業員の職種範囲のことです。いくらライバル企業への転職であっても、技術系から単なる事務職への転職であれば競業とはいえません。
在職中の職種を精査して、具体的内容の誓約書にする必要があります。
ちなみに、こうした畑違い部門への転職をされた場合、ライバル企業に内容証明郵便で競業避止義務契約の存在を通知するという方法があります。

代償措置とは「口止め料」のことです。つまり退職~転職する役員・従業員に対して、「口止め料」的な代償措置があったかどうかの問題です。
仮に、そうした名目がなくても、そうした支払いがあった(金額が大きかった)となる場合もあります。